女世子 愛を継ぐ花 第一集 3/3

 齊王殿下(五皇子)、お待ちください。あなたは面白いことをおっしゃる。私は遊びにしか能がないというのに、どうしてあなたの伴読になれましょうか。なにかあればお名をけがします。君子の修めるべき六芸もまったく身についていません。

 韓十一は述べたてるが、五皇子はただゆったりと歩みを進める。歩幅の違う十一が小走りしたり横歩きしたりしながら五皇子を追うのが、甘やかな旋律のせいもあってか、年上の恋人にまとわりつく少女のようにも見えてくる。足を曳く演技はいつしか忘れ去られていた。
 できることは?
 食べることと飲むことです。姑娘の見定めも大したものです。
 五皇子はやっと十一に向き直った。韓十一よ、私は君、そなたは臣。命に抗うか?
 これぞ伝家の宝刀。(殿下の宝刀?)
 ぺらぺらと回っていた口が閉じる。十一は五皇子に頭を垂れ、拝命した。
 

 定国公府。
 五皇子が韓十一を伴読にしたと聞いて、侍女らが驚く。ふたりのユニゾンが愉快。
 ここまで五皇子の動きが速いとは。もう拒めぬ。十一は茶菓子をほおばる。

 五皇子の身近に居るのは危険です。演技し続けるおつもりですか? 侍女 銀子が茶を注ぎ足す。
 難しい。五皇子の寡黙さは、内に秘めるものがある。それが何であれ、引き入れられるまい。手立てを講じて間合いをとろう。
 ところで調べはついたか? 尋ねられた侍女 金子は、簡策を十一に渡す。国子監の者の資料です。
 そこへ、万公公(万祥)の来訪が知らされた。
 

 皇宮。
 韓十一が皇帝に拝謁する。冒頭で韓家軍を欲するとあったのが誤りと思える、人の好さである。
 皇帝は玉座から降り、朝堂内にしつらえられた席に十一を招き、差し向かって座る。破格の対応だ。
 十一が早く武芸を修めて父の跡を継ぐことを望んでおる、と皇帝は話しはじめる。国子監の一日目はどうであった?
 家では学んでいませんでしたから。
 なぜ?
 私は弱く、父は私に無理をさせませんでした。成績が悪くてもどうかお責めくださいますな。
 皇帝は、穏やかながら厳しく諭す。学びは人を理に明るくする。武将を輩出する韓家にあっても、そなたは学ばねばならん。学んでこそ得るものがある。
 十一は、はいと答える。
 学べ、朕と定国公の期待を裏切るな。
 しかと。返事だけは良い、という演技。
 下がってよい。

 韓十一を見送る皇帝の顔から温かみが掻き消えた。控える宦官 万祥に声をかける。どう見る?
 愚考しますに、ただの放蕩者かと。
 五皇子も国子監におる。あれが韓十一にどう近づくか興味深いことだ。

 彼が韓十一とどうやって仲良くなるのか楽しみです。
 自動翻訳では仲良くなる。学生同士なら仲良しでいいが、政治が絡む筋で仲良し小良しはいただけない。翻訳サービスに当たるといきなり馴れ初めると出た。五皇子ったら‥
 皇帝はさらに問う。廷昊(二皇子)は王家の後ろ盾を得、廷易(五皇子)は楚家の後ろ盾を得ておる。万祥よ、どちらが優れる?
 二殿下は優しく細やかで、五殿下は勇ましく激しくあられます。どちらの皇子も優れておいでです。
 惜しくも、延易と朕には隔たりがある。
 皇上、龍生九子と申します、兄弟とて同じくはなり得ませぬ。
 龍生九子は、文字どおり龍の九頭の子、それぞれ外見も性質も違っていたという。万祥がこれを引き合いに出したのは、皇帝が龍に例えられることもあってか。
 そこで、皇帝はまことの笑みを浮かべた。まさしく。あれは母后に似ておる。
 

 さて、この夜は灯節(日本公式ページでは灯籠祭り)であった。
 人々が声高に話している。今年の灯節を指麾したのは五皇子だそうだ。元后娘娘(元皇后)のお子か。
 会場は水辺で、色とりどりの灯りが吊られ、また水上に浮かべられていた。
 五皇子ラヴの例の姑娘が、伴連れで式典がよく見える場所を確保している。五殿下はまだかしら。

 遊び好きの韓十一も街にくり出した。侍女らと賑わう中をかき分けて最前列へ進み、姑娘に当たる。よろけた姑娘は相手を睨み、気づいた。韓十一!
 自分の名を聞いた十一は振り返る。小爺(私)を知っているのか。わざとらしく声を潜め、私にほの字だな? 侍女らが笑う。金子は姑娘を正視し、銀子はまずうつむいてから顔を上げる、とそのしぐさに性格の違いが表れる。
 姑娘はあまりに見当違いな指摘に、言葉が出てこない。
 十一は言いたい放題。だが、好みじゃないんだよな。
 あなたなんか! いいこと、五殿下に寄らないで、怪我するわよ!
 十一は侍女らと驚きの視線を交し合った。無表情狙いか! おまえ、変わっているな。遠慮ない笑声をあげる。
 実際は違う言葉だが、差別的なので無表情にした。
 姑娘は言い返すが、口から生まれた十一には勝てない。

 ここで、宦官独特の高声が祭礼の始まりを告げた。大陳永定二年の永安街灯節を開始する。
 水上に張り出して設けられた檀上に五皇子が現れ、姑娘は五殿下! とさかんに手を振った。なりふり構わぬ様子に韓十一主従は苦笑する。

 五皇子は香を奉げて祈願する。堂々たる姿である。十一は、はためかせていた扇を閉じていちどは真面目な顔を作ったが、五皇子を見ると口元をゆるめた。
 この十一の笑いの理由はどちらだろうか。おまえを好く変わり者がいたぞ、それとも、あの無表情がこの時ばかりは決まるじゃないか。
 続いて、五皇子が灯節の呼び物に点灯し、好! の声が湧く。
 そのとき、水上の小舟から竿が五皇子めがけて投げつけられた。

 躱す五皇子。
 武侠ものを見ていつも思うが、腰を痛めそう。可動域大事。
 刺客だ、五殿下をお守りしろ、と叫ぶ声が響く。
 竿を投げた刺客らは刀を抜いて檀上に躍り上がり、水中からも水の尾を引いた刺客らが跳び出してくる。炬燭を投げつけ無手となった五皇子は躱し続けるのみ。
 姑娘が恐怖にあえいで身をひるがえし、騒然となる人々の間を抜けていく。お伴が追う。

 五皇子が壁際に追い詰められたところへ、寄野が現れる。
 銀子が世子と声をかけると、十一は関わらぬがよいと応じ、主従は会場を去ることにする。

 新亭も加わる。刺客に水中にお帰りいただくのが爽快だった。
 十一主従は姑娘を見かける。姑娘は五皇子のいる桟敷近くで、衛兵と通せ通さぬで揉めていた。私の父は王丞相よ! そんなに無表情が好きか、と十一は感心する。
 寄野と双刀で渡り合っていた刺客が刀を片方を投げつけ、その隙に逃走した。五皇子は衛士らに命じる。追え!

 韓十一主従が薄暗い路地を歩いていると、向かう先から逃走した刺客がやってきた。獲物を探る侍女ら。
 

 エンディング曲、本当に良い。
 五皇子、キャスト一覧に五皇子でも齊王でもなく陳廷易で出ているんだな。
 ‥待て、主人公は韓十一ではなく五皇子なのか?
 


 こんなに長々と書き連ねるつもりはなかった。
 続きはかいつまみたい。