影が薄い藍景儀

魔道祖師 完結編 第9話 捧ぐ丹心

原作書籍版にあった西瓜シーンがない。
せっかく霊剣 随便が手元に戻ってきたのに、魏無羨がそれで初めに切ったのは西瓜だった。(そしてとうとう最後まで‥)
抜き身のまま放り出した剣を拾い、果汁のベトベトを拭って手入れし、鞘に納めて返したのは、きっと鬼将軍だろう。
手や口元を袖で拭おうとしている無羨に手拭いを差し出すのは、藍忘機だろう。

気絶しないのか、聶(新)宗主。
頼りない彼が単身で討伐に参加したはずがなく、門下の一群を率き連れて、ではなく紛れ隠れていただろう。
彼を見限らず門下に留まった者たちは、そろって前宗主から弟を託されたと信じ、新宗主を守り、聶氏を盛り立てようと努めているに違いない。(そして、そろってマッチョ。)
大量の死体の群れと交戦中のこと、易々と蘇渉に警護対象をさらわれたのは仕方がないとして、怒号をあげることすらしなかったのは、いくらなんでもあり得ない。アニメ版の構成ミスだ。
ここでストーリーのつじつま合わせに略奪される聶宗主の「助けてー」がいかにも虚しい。

婚礼衣装だと本国のマル腐な皆さんを歓喜させた血染めの二人だが、自分的にはがっかり。
藍景儀の短いエピソードがさらに簡略化されてしまったから。
きっといつも同世代の藍思追と比べられ、だめなほうの子と見られているだろうに、翳りがまるでないお調子者のムードメーカー 景儀。自分はこの子もけっこう好きだ。
似たような立ち位置だった江澄からじわじわと滲みだす鬱屈は、この子とは無縁のものだ。
どうかこのまま謹厳実直な藍氏にあって異色な明るく話せる先輩になってくれ。
さて、原作書籍版では、魏無羨が上着を脱いで汚れの少ない肌着に血で呪文を書きつけ、自らを生きた召陰旗となす。
そこで、景儀は「俺も」と上着を脱ぎはじめて止められる。
同世代の中でひときわ臆病な彼だが、絶望的な状況に逃げ場を示されたこの瞬間、立ち向かう側を選んだ。えらい、やればできる子!
だが、前塵編の第一話で描かれたように、藍氏の上着には術が施され着用者を守っている。
それを脱ごうとするあたり、やっぱりおっちょこちょいなんだよな‥