いろいろと納得いかない

転生王女と天才令嬢の魔法革命 第九話 姉弟と誰がための王冠

いちど壊すしかない。なにやら覚えのある動機だ。憂国のモリアーティ?
比べてしまうとこちらの事件が矮小なものに見えてくる。
いや、王太子殿下にとっては姉の存在がそれだけ大きいのか。

前回で推測した彼の心理、読み誤っていた。
彼はただ、姉を認めない世の中をひっくり返したかったのだな。
しかし、その手段は理解はできても容認はできないものだった。
どうしてこんなことになったのか。
確かに世の中には手放した笹舟の流れゆく先のように自分では制御できなくなってしまうことはある。
それでも、笹船を手拭いにはさんで懐にしまう方向に行く分岐点はきっと存在していたのだ。
国王という立場上、父には娘を庇って貴族を退けることができなかったとしても、弟には取れる手段があったはず。
彼が姉を擁護する姿勢を明確にしたら、貴族たちの表立った批判が多少は抑えられたのでは?
貴族の一人ひとりと個別に面談して説得に努めるという方法もあったのでは?
事ののち、うって変わって晴れ晴れとした表情になった廃太子に視聴者が抱くモヤモヤは、きっと父王の胸中と似ている‥

男爵令嬢は流刑となった廃太子についていくと疑いもしなかったので、肩すかしを食らった感が激しい。
「許しません、一生恨みます」まで観ても、なお「だから一生恨み言を聞いてもらいます」と続くとばかり。
彼女は貴族社会に引き上げられてすぐに王太子の庇護を受けるようになり、友人をつくれないことをはじめ、数限りない制限を課されていたらしい。
彼への強い執着――ストックホルム症候群のようなゆがんだ恋情だか依存心だか、それこそ信仰に近いなにか?――にとらわれていてもおかしくない。
なので、ふたりの別れがあっさりしすぎていて納得いかない。
とはいえ、まあ、病んでいるよりは健全な心であるほうが良いに違いない、うむ。