女世子 愛を継ぐ花 第一集 1/3

 大陳(陳国)皇帝 陳承瀾は西北の国境を守る韓家の軍を手中に収める口実を探していた。
 皇帝は健康を害しており、儲君(皇太子)の座を五皇子 陳廷易(齊王)と二皇子 陳廷昊(鄭王)が争っている。五皇子は七年間従軍して功を立て民心を得るも父の覚えがめでたくなく、二皇子は丞相である叔父 王安籬によって権力を握っている。さらなる決め手に欠け、争いは膠着していた。
 

 京城(陳国の都)、午ごろ。(牛じゃなくて昼と読んでね。)

 城郭の門をくぐって都入りした「韓」の文字の入った車と別の一台とがつき当たる。先の車中の金持ち少爺(ぼんぼん)が相手方を当たり屋と罵り、こちらも名を成した人物である相手方を貶め、耳目を集めた。
 その少爺は、次に都一と名高い李錦軒を訪れて特等の客間を求め、すでに入室していた客を追い出した。また、舞台で舞う姑娘を客間に呼ぼうと思い立ち、姑娘にそれを強いた侍女が店の者らと揉める。
 他の客間で私的な面談を行っていた五皇子は、彼に仕える衛士から揉め事が起きたと聞く。

 衛士は説得しようとするが、侍女は聞く耳を持たない。
 少爺は舞台近くまで出てきて野次を飛ばしながらこの騒ぎを楽しんでいた。五皇子がその後方に立つと、少爺は見目好く強い姑娘(侍女)を自慢する。
 侍女 金子の振るった鞭を避けてからかう衛士 寄野は、侮りが過ぎて平手打ちを食らう。侍女 銀子を危機と見た少爺がバナナの皮を放ると、衛士 新亭がそれを踏んで体勢を崩す。
 勝負がつかないのは、どう見ても衛士側の手加減のせいだった。五皇子がそこまでと制止する。
 おまえ、そっち側だったのかよ。面目を潰され不機嫌に立ち去ろうとする少爺の腕をつかむ五皇子。

 くるくる。
 侍女ふたりの声がああっと被る。
 一瞬後、少爺は五皇子にあまり通常ではない捕まりかたをしてしまった。引き留めて諫めるつもりが、相手を引き寄せるのがあまりに容易かったせいで抱き留めるかたちになったのでは?

 小爺(私)は定国公の世子 韓十一だ、思い知らせてやるぞ、と少爺は脅し、不敬にも蹴りつける。まだ相手の素性を知らないのだ。
 何を考えているのか読めない五皇子の顔。しかし、韓十一と名乗るのを聞いて、ほんの僅かだけ目が見開かれる。
 五皇子は十一を放し、無表情を保ちつつなぜか静止していたが、ややあって店を出ていった。続く衛士ず。去り際に寄野が金子にふんっと顎をしゃくる。
 すまん、主人公より寄野に注目しても良いかな? かわいいよ、彼。

 やつは私の機嫌を損ねまいとひいたのだな。機嫌を直して韓十一も侍女ずと去る。バナナをもう一本取ってから。
 

 この五皇子がここに居合わせたのは、韓十一と大いに関わりがあった。

 十一が侍女を舞台に向かわせたころ、韓世子が都入りするや否や一悶着を起こしました、と五皇子は腹心からの報告を受けていた。
 見かけでは測れない、と疑う五皇子。
 腹心は思うところを述べた。目的は韓世子本人ではなく韓家軍です。韓世子は明日から国子監で学びはじめます。近水楼台先得月、二皇子より先に彼に近づくべきです。
 近水楼台先得月は、地の利という語がそのまま当てはまり、訳すなら近かれば先んず。条件の良い者が先ず得るのだから、急ぎ条件を整えよ、と腹心は勧めている。
 五皇子は考え深げに言う。定国公は三代にわたる忠臣。その子が無能たり得るか? 国子監で真贋を見極めよう。
 すると、まるで待ち構えたかのように十一が揉め事を起こしたのである。
 


 ところで、ひとりの姑娘が客として李錦軒にいた。五殿下(五皇子)ラヴで付きまとっている様子。
 他の野次馬客とともに韓十一のやらかしの一部始終を見ており、ただでさえ嫌悪感を持ったのに加え、例のバナナの皮が彼女の足を捉えた。それも衆目のなかで。
 

 その夜、齊王府(五皇子の居所)。
 五皇子は、韓十一のふるまいを思い起す。韓十一はまこと放蕩者か?

 韓十一は本当におしゃれですか?
 自動翻訳がたどたどしくいとおしく、筆者のニューロンが誤動作、五皇子を「かわいい」枠にしっかりと分類してしまった。奇妙な訳文は全般に亘るが、五皇子の破壊力は劇中の役回りもあいまって頭一つ抜ける。
 纨绔をいくつかの翻訳サービスで試した。洒落者、放蕩者、めかしこんだ、ダンディ、享楽的な、遊び人、等々。着道楽に寄ったニュアンスだろうか。洒落者や粋人は洗練を求め、遊び人と伊達者とは侠気を持ち、傾奇者は常軌を逸しているとか。どうもしっくりこない。日本公式ページでは放蕩者となっていて、十一が酒食に溺れる金持ちぼんぼんを演じているわけだし、もうそれでいいや、と。

 さて、ここで韓十一の事情を説明しよう。
 韓家の本領である北境を離れ京城の国子監(名門の子らが集う学び舎)で学ぶよう、韓十一に皇帝から命が下った。五皇子も丞相(二皇子派)の子 王仲鈺も国子監で学んでいるため、十一に近づかぬはずがない。
 旅立つにあたり、十一は中立の立場を保っている父 定国公 韓継忠から政治派閥に与せぬよう言い含められていた。また、引き続き女であることを隠し通せ、と。
 そなたは男に扮するのだ。これは危険なこと、表沙汰にしてはならぬ。韓家に後継なしと陛下がお知りになれば、韓家軍には害となろう。無為に過ごし、遊び暮らし、浅学非才を示せ。決して権力闘争に巻き込まれるな。
 つまり、鼻持ちならない金持ちぼんぼんは見せかけ。容易く五皇子に引き寄せられたのも武芸の腕を隠すため。その時に侍女らが見せた慌てぶりは、小姐(お嬢さま)と男との過剰な接触も要因であったのだ。

 話を戻して、同じ夜、定国公府(韓十一の居所)。
 寝支度する韓十一と侍女らが、この日の成果を振り返っている。「名声」を都中に広められたよね、と十一が聞くと、ええ、噂の的です、と二人が答える。
 無能を装うのは如何ほどのことでもない。恐れるのは私が女と発覚すること。それは欺君(陛下を欺く)の罪だ。
 金子・銀子に緊張が走ったので、十一は己の長年の放蕩ぶりに触れ、これまで疑いを招いたことはなかった、と言いきる。
 明日は国子監がどれほどのものか見せてもらおうじゃないか。
 

 翌日の朝、国子監。
 入学してくる定国公世子の話題で持ちきり。

 王仲鈺が取り巻きーずと講堂へ向かう。
 取り巻きの顧萬が、十一の悪行を語る。李錦軒で韓十一に客間を乗っ取られた青年である。
 王仲鈺も十一への怒りを語った。舞台の姑娘は仲鈺の贔屓らしい。演目がおじゃんになった。一点眉の作であったものを。
 一点眉とは劇作を行う者で、仲鈺は彼の作品に一家言を持っているのが伺える。
 ここは北境ではないことを教えてやろう、と申し合わせるのを、無表情で聞く五皇子。

 しかし、韓十一はなかなか姿を現わさなかった。
 


 原語版を既存翻訳の英語を経て日本語に自動翻訳して視聴、筆者が会話をやや古風な言葉遣いに置き換えたものである。
 三重の置き換えは大いに誤認を生むと、諸兄にはご理解を乞う。
 また、筆者の感想・私見は、それが原作者・制作者の意図と同じからぬと、あわせて留意されたし。