ブレイド・マスター(繡春刀)1/3

 明の時代。
 東廠の長官であった宦官 魏忠賢が失脚、魏忠賢に与した閹党を一掃するため、皇帝は残党狩りを命じた。
 その実務を担当したのが錦衣衛(警察と軍事を兼ねる組織)である。
 

 深夜、錦衣衛 沈煉は同僚とともに閹党 許顕純の捕縛に向かった。翌朝には曹家へと逃がす予定で、陳家が許顕純をかくまっていた。
 沈煉に十四歳の娘を妓楼に売ると脅され、已むなく陳は居所を吐く。
 錦衣衛らは部屋を強襲するが、もぬけの殻だった。

 窓から逃げた顕純であったが、錦衣衛が外でも張っており、手練れに手下を討たれ、逆方向に逃げると網で捕縛される。顕純は恨み言を述べる。「盧剣星、私を逆恨みしたな。昇進させなかった腹いせか」。
 網を指示した盧剣星、沈煉、そして手練れの靳一川は、義兄弟の契りを結んでいた。
 

 職務を終えた靳一川は沈煉に寄り、なにやら言いづらそうにもごもごする。心得て、沈煉は金を手渡した。「ケリをつけろ」。
 

 沈煉は妓楼通いをしている。花代を払って周妙彤を呼ぶが、床に入ったことはない。
 「いつか君を身受けする」と言う沈煉に、「あなたの稼ぎでは無理よ」と答える周妙彤。「それに、刑部(司法の組織)の特赦状がなければ」。
 

 靳一川は人を探して通りを走っていた。口笛を聞いて振り向くと、そこに探していた相手がいた。
 「金は渡す、帰ってくれ。これが最後だ、もう来るな」。盗賊上がりであることを事由に、一川は兄弟子 丁修に強請られているのである。
 丁修はせせら笑う。「三日で銀百両を用意しろ」。斬りかかるが軽くいなされ、一川は咳き込む。労咳なのだ。
 

 許顕純の捕縛の翌朝、盧剣星は上官 張英に任務の完了を報告した。
 剣星は以前より昇進を願っている。手柄を張英のものとして報告し、金も渡しているのだが、いっこうに果たされない。「お前の手柄など」、「あの程度の金」と罵られ、金額を増やせと要求される。

 そんな張英も、東廠(宦官の組織)の新たな長官 趙靖忠には滑稽なほどに卑屈になる。
 その趙靖忠が義兄弟三人を呼び、密命を与えた。逃亡した魏忠賢を追え。「陛下が殺せと」。
 

 三人は馬を駆り、魏忠賢の一行に追いつく。
 宿の前で沈煉が応援を呼ぼうとすると、盧剣星が止める。手柄を奪われたくないようである。「好機をつかんで這い上がるんだ」。靳一川も同意したので、三人だけで魏忠賢の泊まる宿に踏み込むことになった。
 多くの閹党が護衛についていて、中でもひとりが手練れであった。魏忠賢の娘 魏廷である。
 盧剣星は沈煉を魏忠賢のもとに行かせ、靳一川とともに二対多の厳しい戦いをする。

 魏忠賢は乱闘をよそに宿の二階で賽子振りに興じていた。
 これは物語の結末の暗示だろうか。賽子というのがままならぬ運命を表しているようで、しかも振っているのが多くの人の運命を狂わせてきた魏忠賢とは。
 魏忠賢は言う。「首を取っても役目が果たせん。わしは失脚したとはいえ腐るほど金を持っている。朝廷には金がない。皇帝の狙いはわしの金だ」。

 思わず聞き入ってしまう沈煉。魏忠賢は四百両の金を見せ、「お前の俸給は安かろう」と惑わせる。

 塀の外からさらに閹党らがなだれ込んできて、盧剣星は沈煉を呼んで叫んだ。
 すると、二階から火の手が上がり、沈煉が宣した。「魏忠賢は死んだ。お前たちも無駄な抵抗はよせ」。
 閹党らはがっくりと膝をつく。
 

 帰参した三人。
 宰相 韓曠と東廠の長官 趙靖忠が魏忠賢の遺体を検分した。しかし、全身が黒焦げで本人と確認できない。
 韓曠は疑うが、靖忠は三人の口添えをした。それに感謝する三人に、「何が真実かは承知しておろう」と仄めかして靖忠は去る。
 


 靳一川は労咳の治療に通っている。医者の娘 張嫣に心惹かれており、娘のほうも目を見かわす様子を見れば同様であるのは明らかだった。
 

 林の中にひとり馬を進める趙靖忠。一軒の小さな小屋には魏廷が待っていた。「無茶を。閹党狩りが続くさなかなぜ都へ」と靖忠が問うと、しわがれ声が返った。「わたしへの当てこすりか」。簾の向こうに魏忠賢が居たのだった。「義父上、ご無事で何より」。
 靖忠は忠賢に通行手形を渡そうとするが、受け取らない。「追い払う気か」。「滅相もない」。
 魏忠賢は義理の子 趙靖忠に近々と寄り、あざける。「わしを殺すのだろう。巻き添えになりたくないからだな」。そして唆した。「ならば、わしを逃した錦衣衛を殺せ」。「韓曠が疑い始めています」。「殺したら、わしは明を離れる」。
 

 沈煉は妓楼の周妙彤の部屋に忍び入っていた。「この銀五百両でお前を身受けする。蘇州へ行こう」とつぶやく。
 すると、前の廊下に周妙彤と男が現れ、彼女が「一緒になりたいのはあなただけ」と言うのを沈煉は聞く。商売上の定型句ではなく、ふたりは思いあっているようだ。
 


 家に戻った沈煉は、義兄弟と酒を酌み交わすが、見張られていることに気づく。靳一川が曲者に斬りかかると邪魔が入り、沈煉が邪魔した曲者の手に矢傷を負わせる。しかし、ふたりともを取り逃がす。
 「閹党の残党に狙われているのかも」と盧剣星が推測を述べる。沈煉は心当たりがあるため、非常に恐れた。「そうなら都は危険すぎる。転属を掛け合ってくれ」。しかし、そこまで恐れる理由を理解しない剣星は取り合わなかった。

 趙靖忠は苦痛に耐え、手から矢を抜いた。「出過ぎた真似を」と魏廷をとがめる。省みる様子もなく魏廷は言葉を返す。「義父上は早く始末しろと」。
 「考えがある」と言って、趙靖忠は傷ついた手で筆を執り、閹党の名簿に都察院の高官 厳佩韋の名を書き込んだ。
 武門の厳家は、手練れの食客を多く抱えることでも有名であった。
 


 字幕版を視聴。
 正編と続編で言葉遣いが違うのは字幕版と吹替版との違い。